PTSDというのは大きな災害や事故を目の当たりにしたことで、それを経験した場所に行くと「あの災害・事件」を思い出すフラッシュバックが起きる現象。
場所だけでなく、音・臭いといったものでも過去を思い出し身動きできなくなったり、泣き出したりもする。
一過性とも言われているが、その症状は数ヵ月から数年続くと言われる。
対して「複雑性PTSD」というのは、恐ろしい経験や状態が長期間続いたことで「心に傷」を負った時にでる。
分かりやすい例は「戦争や戦場での経験」や「人質」などがある。
こういった経験が数ヵ月から数年続くと通常のPTSDよりもキツイ症状が出る。
鬱病、双極性障害、悪夢、対人恐怖、被害妄想やその他妄想、敵意、といったモノが出て来る。
そして原因不明の体調不良として「悪性愁訴」がある。
例えば、朝起きたら背中が痛く「寝違えたかな」と思っていたら、本当は複雑性PTSDによる悪性愁訴からの症状だったりする。
肩がこる、頭が痛い、眠い、食欲がない、気力が湧かない、意欲がなくなった、というのもこれが起因している。
戦争映画等で「帰還兵」が悪夢に苦しむシーンがあるが、あれも複雑性PTSDである。
これと同じ事がDVモラハラ被害者には出て来る。
出先で、クシャミをしたオッサンの大きな声を聞いて「身体が固まった」人もいるし、飲食店でお皿が割れる音を聞いて固まった人もいる。
その音が当時を思い出しフラッシュバックするのである。
自分が経験した浮気や不倫で酷い目に遭った人でも、その時に掛かっていた音楽、香水の香り、相手のヘアースタイルでフラッシュバックということもある。
言葉、それも相手が言った言葉と同じものが出て来ても反応する。
複雑性PTSDは厄介なもので、「何が」大元なのか分からない。
分からないどころか、その時経験したものすべてが原因になってしまう。
これの治療法は「話すこと」くらいである。
自衛隊の災害派遣で死者をたくさん見た隊員も複雑性PTSDを起こす。
そこで使われる手法も、その日の夜に小隊ごとのミーティングで皆が話す方法が取られている。
その日経験したことをその日のうちに吐き出して、悪化するのを防ぐのである。
これはアメリカ軍でも同じである。
たぶん戦争経験をした軍隊はどこでもやっているはずだ。
DVモラハラ、浮気不倫で起きたイヤな経験は「その時」話すこともできないし、誰かに話すこともできないので、どんどん溜まり続け心を壊すのである。
しかし、そのままにしていては「廃人」になってしまうので、後からでもいいから吐き出す作業を続けること、途中で止めず続ける事である。
恥ずかしい、思い出したくない、そんな理由で吐き出さない人が多いのだが、それが一番悪い結果を招くパターンである。
思い出したくない、と言っていると強烈に焼き付いて、それが心の奥底に封印された状態で格納される。
されるけど、確実に表に出て来るので、封印は不可能なのである。
これをするから心理学でいう所の「投影」が起きて、周囲の人への憎悪や敵対心が強く出て来る。
そして回りから人がいなくなる、友達がいなくなって誰も寄り付かなくなるのである。
これが孤立となって社会と隔離された生活、つまり引きこもりになったり、本当に山奥に住んで仙人のような暮らしをする「世捨て人」になってしまうのである。
声に出す事、話す事、これは人間にとって重要なものだし、さらに言えば「複雑性PTSD」解消の特効薬である。
精神科で薬を処方されて治すより、嫌な思いを吐き出す方が回復が早いといえる。
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