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相談者の話から、私は何を探しているのか

8月29日
読了時間: 6分

相談というと、話を聞いてほしい、気持ちを分かってほしい、という人もいる。


一方で、

「なぜ、こんなことになったんだろう」

「相手は、なぜこんなことをするんだろう」

「これから、どうすればいいんだろう」

その答えを探して相談に来る人もいる。


では、私は相談者の話を聞きながら何をしているのか。

改めて考えてみると、私はすぐに答えを探しているわけではない。


その前に探しているものがある。

「実際に何が起きているのか」である。



話の中から事実関係を拾っていく


相談者の話を聞きながら、私はいろいろなことを考えている。

いつ、何があったのか。

その前には何があったのか。

誰が何を言ったのか。

誰が何をしたのか。

その結果、何が変わったのか。


もちろん、相談に来る人の話が最初から時系列できれいに整理されているわけではない。


昨日の話をしていたと思ったら、何年も前の話になる。

夫の話から親の話へ移り、職場の話から昔付き合っていた人の話へ移ることもある。


それでいい。

私は、その中から情報を拾っている。

そして、ときどき「ん?」と思う。


話がおかしいという意味ではない。

私の頭の中で、どうしても話がつながらないのである。


Aという出来事があった。

そのあとBが起きた。

そしてCになった。

話としては分かる。


しかし、

「Aから、本当にBになるのか?」

「BとCの間に何か抜けていないか?」

そんなところが気になってくる。



私は「言葉を尾行」している


気になるところが出てくると、その話をそのまま掘り続けるとは限らない。

突然、昔の話を聞くこともある。

別の人物について聞くこともある。

一見すると、まったく関係のないことを聞く場合もある。

そして、しばらくして元の話へ戻る。


相談者からすれば、

「なんで今、そんなことを聞くんだろう?」

と思うかもしれない。


以前は私自身も、単に話があちこちへ飛んでいるだけなのかと思っていた。

しかし最近、自分が何をしているのか考えてみて気がついた。

私は長く探偵をやってきた。


探偵は対象者を尾行する。

対象者が動けば追う。

止まれば待つ。

どこへ行くのかを最初から決めつけず、実際に動いた方向を見ながら追っていく。

相談でも、私は同じようなことをしているらしい。


ただし、追っているのは人ではない「言葉である」。

相談者が出した一つの言葉を追っていく。

すると別の出来事へ行く。

そこから別の人物につながる。

さらに昔の出来事につながる。

そこで得た情報を持って、もう一度最初の話へ戻る。


言ってみれば、私は相談者の「言葉を尾行」しているのである。



ときには「言葉を張り込む」


もう一つ、探偵の仕事に似ているところがある。

張り込みである。


話の中に気になるところがあっても、すぐには聞かないことがある。

何かありそうだ。

しかし、それが何なのかはまだ分からない。

そんなときはいったん離れる。

別の話をしながら、その話題がもう一度出てくるかを見る。

違う方向から質問する。

小さな言葉を一つ投げて、どんな話が返ってくるのかを見る。


これも探偵の仕事にたとえるなら、「言葉を張り込んでいる」

ということになる。



話の中にある「欠落」を探す


では、私は何を探しているのか。

一つは、「話の中の欠落」である。

なぜ、この間の話がないのだろう。

なぜ、この人物だけ出てこないのだろう。

なぜ、ここだけ説明が急に短くなるのだろう。


ただし、何かが抜けているからといって、

「この人は何かを隠している」とは考えない。


本人が意図的に言っていないのかもしれない。

言えない事情があるのかもしれない。

思い出したくないのかもしれない。

本人にとっては当たり前すぎて、説明する必要がないと思っているだけかもしれない。

あるいは、その出来事が現在の問題と関係していることに、本人自身が気づいていない場合もある。


だから、欠落を見つけても一直線には入らない。

周りを見る。

遠くから見る。

近づいて見る。

そして、また離れる。

そうやって、欠けているものが何なのかを探していく。



「話がつながっている」ことも疑ってみる


もう一つ見ているものがある。

「話のつながり」である。


話が論理的につながっているからといって、その因果関係が正しいとは限らない。

たとえば、

「私が余計なことを言ったから、夫が一週間無視したんです」

という話があったとする。


本人の中では、

余計なことを言った

夫が一週間無視した

と、きれいにつながっている。


しかし私は、

「ちょっと待って。それ、本当につながっている?」と考える。


余計なことを言った。

だから一週間無視された。

なぜ、そうなるのか。

その因果関係は誰が決めたのか。

相手からそう説明されたのか。

本人がそう考えたのか。

以前にも同じことがあったのか。


ここを見ていくと、本人の中では当たり前につながっていた話が、実はまったく別の構造だったと分かることがある。


「夫がナルシストです」から始めない


だから私は、相談者が最初に持ってきた問題を、そのまま問題だとは決めない。

たとえば、「夫がナルシストなんです」と言われたとする。


そこで、

「では、ナルシストへの対処法を考えましょう」

とはならない。


私が最初に聞きたいのは、

「何があったんです?」である。


実際に何が起きたのか。

何をされたのか。

その前に何があったのか。

そのあと何が起きたのか。

そこから話を追っていく。


すると、相談を始めたときに本人が問題だと思っていたことと、話を追った先で見えてきた問題が違っていることがある。

ここが重要である。


対処法を考える前に「何が起きている?」


何が問題なのか分からなければ、

「どうすればいいのか」を考えても仕方がない。


対処法を考える前に、

「そもそも、何が起きているんだ?」を考える必要がある。


私は普段、

「なんでそうする?」

「何の得がある?」

「だったらどうする?」

という考え方をしている。


しかし、その前に一つある。

「何が起きている?」である。


何が起きているのか。

何が抜けているのか。

どことどこがつながっているのか。

そのつながりは本当に正しいのか。


そこが見えてきて初めて、

「なぜ相手はそうするのか」

「それをすることで何の得があるのか」

「だったら自分はどうするのか」

と考えられる。



探偵の仕事と相談は、意外なところでつながっていた


考えてみれば、探偵として現場に出ていたときも同じだった。

人の動きを追う。

場所を見る。

時間を見る。

誰と接触したのかを見る。

そして、一つひとつの事実をつないでいく。


現場では、現実の中から事実を拾っていた。

今は相談者の言葉の中から事実を拾っている。

人ではなく、言葉を尾行する。

気になる言葉があれば、少し張り込んでみる。

遠くから見たり、近くから見たり、周りを回ったりする。

方法は違っていても、最後に知りたいことは同じなのである。


「実際には、何が起きているのか」

そこが分かって、ようやく次の問いへ進める。


「だったら、どうする?」

私は、そんな順番で相談者の話を聞いている。

 
 
 

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