探偵の仕事はこのところ「遠くへ出張」がなく、せいぜいあっても近場をウロウロとか、情報調査となってしまい、遠距離での行動がまったく無くなってしまった。
オレの性格としては、「徘徊」とか「遠出」「遠征」が必要なので出張に飢えている状態である。
渇望しているのである。
前世は砂漠を移動する民族だったか、それとも旅芸人だったのかと思ってしまうくらい「定点にいる」というのが苦手である、ただし張込みは除く。
思い起こせば幼稚園の頃と小学校一年の頃の二度ほど、行方不明で警察沙汰になっている。
その日のうちに帰ってきたので「騒ぎ」程度であったが、本人としては「向こうに見えるあれはなんだろう?」という軽い気持ちで歩いて行ってしまっただけである。
こういった習性があるせいか、「あれは何だろう?」と思ったら確認せずにいられない。
車だろうが、歩きだろうが自転車だろうが、ひたすら目的地に向かうのである。
趣味=放浪である。
そんな人間が家でパソコンを見続けることができるであろうか?
そんな人間が都内の近場をウロウロするだけで満足するであろうか?
無理に決まっている。
探偵の仕事で出掛けて、
今日は帰れるだろうか?
今日はどこで寝るのだろうか?
いつになったら食事にありつけるのだろうか?
今日の宿はどこになるのだろうか?
いつ家に帰れるのだろうか?
等と思いながらの綱渡りのような日々が懐かしい。
それも遠くなってしまい、だんだんと気持ちが黄昏てきている。
あのスリルがたまらないのである。
誰かオレを遠くへ呼んでくれ。
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