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探偵の変わった経験(初めての体験)

更新日:6月28日

「初めて」とは言っても、毎回のように変な「初めて」がやって来る探偵である。

しかも、他の探偵とは違った「初めて」が多いと思われるオレだが、けっこう変わった経験だと思う事を紹介する。



ある冬の日の夜、調査依頼があり依頼人の自宅に呼ばれて面談していた時のこと。

依頼人は夫と死別した70歳過ぎの一人暮らし女性。

親族の問題について「調査を依頼したい」ということで自宅訪問した。


いろいろ話していたら「トイレ行ってきます」ということで、一息ついていたらトイレから「スミマセ~ン、ちょっと来てください~」と死にそうな声が聞こえてきた。

「トイレットペーパーを持ってきて」とでも言うのかと思っていたら、なんと「助けてくださ~い」「下血してしまいました~」「救急車を呼んでください~」とのこと。


これはエライことである。

朦朧とする依頼人をトイレからやっとこさ助け出し、ちゃんと服を着せてから119番となった。

なんで探偵が人の家を訪問して救急車を呼ばなくてはならんのか?

なんでオレの時にそうなるのか?

こんな事態を誰が想像するであろうか?


20分ほどで救急車が到着したが、病院は「行きつけがある」ということで、オレが親族への連絡(と言っても子供達へ)をしたり、荷物をまとめたり、戸締りをして慌ただしく出発した。

もはや乗り掛かった舟で「イチ抜けた~」などと言える状況ではない、このままくっ付いて行くしかない。



救急車に乗るなんぞ生まれて初めてであったが「乗り心地の悪い事この上ない」。

隊員も「揺れるでしょ?」と笑いながら言う。

救急要請した当事者としていろいろ聞かれたが、さすがに「探偵で、調査の話しをしてました」等とは言えないので「便利屋です、話し相手で呼ばれました」と答えた。


病院に到着して1時間以上過ぎて東京の反対側に住む息子がやってきたが、オレの車は依頼人の自宅近くのコインパーキングに止めてある。

送ってくれることにはなったが、診断や処置が終わるまで足止めである。

その息子にも「便利屋です」と誤魔化してやり過ごした。

結局、午前2時過ぎまで病院で待機となり、依頼人も無事だったので一緒の車で帰宅し、適当な時給分の料金を受取って終了した。


調査で驚く、聞いて驚く、というのはあるが目の前で依頼人がぶっ倒れ、救急車を呼んで一緒に病院に行くなんぞ初めてであった。

というか「そんな事、想像できんわい」である。




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