相談を受けていると、うちの夫は自己愛性パーソナリティ障害だ、と言う人が多いのですが、話しを聞いて行くとそれよりもアスペルガー症候群の方が近いのでは、と思うようなケースが随分とあります。
メンタル疾患の多くは、一つだけではなく、いろいろな疾患が重なっていろいろな症状が出てきます。
一杯のミックスジュースにいろいろな味や香りがしたり、入れる果物の量の違いによって味の濃さや香りが違って来るように、メンタル疾患では行動や言動の濃淡が微妙に変化してきます。
それこそ、瞬間瞬間で変化することさえあります。
発達障害がベースになっているケースもあるし、他の疾患が影響してそれが強調されてくることもあります。
もちろん、そこには生育環境というものも深く関係してきます。
そこで、アスペルガー4形態の中でも最強と言われる尊大型アスペルガーについて、もう一度説明します。
彼等の態度の大きさや攻撃性を見ると、ほぼすべての人が自己愛性パーソナリティ障害、またはサイコパスだと思ってしまいます。
まずは尊大型アスペルガーの特徴を上げます。
1.大きな態度で自分の主張を押し通す、マイルールを押し付ける、周囲を圧倒するようにふるまう
2.強圧的態度をとるのは、気を許せる人の前だけ、家族だけという内弁慶も多い
3.自分の主張にこだわり、その主張に沿った方法での問題解決にこだわる
4.学力が高いことが多い
5.自分が不利になるようであれば、いくらでもウソを言って身を護る
1のマイルールの押しつけは境界性のボーダーにもよく出てきます。
帰宅してから、風呂、食事、テレビ、ゲーム、寝る、といった流れが決まっていて、そのパターンを崩されることを嫌います。
また、夕飯の時間が夜8時となっていたら、8時丁度に暖かい食事に箸を付ける、といった時計のような正確さを要求するケースもあります。
2.強圧的態度は、オレ様だ、といったオラオラ的な態度です。
昔の亭主関白、頑固オヤジのような面があります。
会社であればパワハラ野郎だし、セクハラオヤジでもあるでしょう。
モンスタークレーマー、モンスターペアレントというのも同類かもしれません。
しかし、中にはこういったオラオラ的態度は家庭内だけ、という内弁慶もいます。
家では偉そうにして態度の大きい夫なのに、外では卑屈なほど頭を下げていたり、上司におべっかを使ったりしていたりします。
下に強く、上に弱い、というのがけっこう多いモノです。
3の自分の主張については、それ以外の意見や考えを一切認めず妥協はあり得ません。
ただ、自分の主張とは言いながらも、誰かの言葉の受け売りや、奥さんなどが話したことを時間が経ってからオウム返しのように使ってくる事がよくあります。
例えば、奥さんが「やっぱりAの考え方だよね」と言ったとすると、その時は猛反対して怒鳴りつけます。しかし、数十分、数時間すると「オレはやっぱりAだと思う」、「前からそう思っていたんだ」と言い出し、「やっぱりオレの考えに間違いは無かった」等と後だしジャンケンのようなことを平気で、平然と、恥ずかしがることもなく言い出します。
その考えは誰のモノか、誰が言ったのかは頭に無く、今この時、この考えを出しているのは自分であって、そういうことが言える自分は素晴らしい存在だ、と思っています。
4.学力が高いというのは、偏差値の高い大学を出たなどで、けっこうハイレベルな企業や職場に勤めている事が多いモノです。
興味を持った物事に集中することができる、耳からの情報よりも、本など視覚情報を記憶する点が優れているということで、勉強に没頭して成績が良かったりします。
頭はとても良い代わりに、感情や共感性が乏しい人が多いようです。
5.ウソを言って身を護るについてですが、アスペルガーはウソを付かない、とよく言われます。これは普段の会話の中ではウソを言わないということで、自分が不利になる、自分の悪事がバレる恐れがあるなら、いくらでもウソを言う、ということです。
よくあるのが、家でのDVがバレたら困るので、奥さんが暴れる暴言を吐く、家事をしない、子供の世話をしない、金遣いが荒い、などと周囲の人に話して身の安全を図る、といたものがあります。
自分の罪を誰かに擦り付ける訳です。
こんなことをする人と結婚して一緒に暮らしていけば、こっちの方がオカシクなってしまうのも当然といえます。
その結果出てて来るのがカサンドラ症候群です。
アスペルガー傾向は分かりにくい、取っつき難い、言葉や感情が分からないといった点が多く難しい相手ですが、尊大型、受動型、孤立型、積極奇異型といったアスペルガー4形態のうち、尊大型以外は「慣れれば対応できる」とも言われています。
では尊大型はどうかというと「慣れるどころではなく」、「耐えられないアスペルガー」と言われます。
もう少し分かりやすくいうと
●意見が通らないと怒る、キレる、不貞腐れる
●自分の考え意見に反対する者は敵と考える
●家事は妻がするもの、女がすることで男がすることではない
●常に上の立場でいないと気が済まない
●周囲の人には好い父親像を見せる
●趣味など、自分のしていることが最高に素晴らしいと考えている
●自分が使うお金は有意義なものと思っている
●悪口が大好き
●自慢して武勇伝を披露し、事あるごとに繰り返す
●自分の感じ方が標準であると確信している
恐ろしく昭和色を残している化石のような考え方を今も維持しています。
キレて理論理屈で責め立てるところがある反面、恐ろしく単純なモノの見方もします。
自分の意見に反対する人には、「アイツはダメな人間」
賛成する人には、「アイツは良く分かっている、いい奴だ」
こんな形で人を評価して自分の手下の様にします。
ですから、尊大型の元にはイエスマンだけが勢ぞろいとなり易いものです。
趣味については、自分の趣味は最高であり、他人の趣味をバカにすることがよくあります。
お金の使い方では、自分の使い方が正義であって、家族が使うのはムダ使い、死に金と見ます。
ですから、自分がどんなにムダ使いしてもそれは有意義な使い方であって、買い物でついついたくさん買ってしまったり、値段の高いものを買うとムダ使いと判定してキレます。
武勇伝と言うと、「アイツの態度が気に入らないからぶん殴ってやった」、「頭に来たから蹴とばしてやった」、「上司の態度がなっていないので怒ってやった」といった事を奥さんに自慢げに話しても、それは頭の中での妄想の武勇伝だったりします。
「オレは昔凄かった」と言って、何十年も昔の喧嘩話し、それもたった一回だけのことを未だに自慢し続けることもあります。
自分が標準と言う点では、以前話したことがあるように、風呂の温度は年間通して39℃、これを変えると大声で怒鳴って騒ぐ人もいました。
自分にとって39℃が一番心地よいのかもしれませんが、夏でも冬でもこの温度では困ってしまいます。
また、冷房温度、暖房温度についても事細かに設定されている事も多く、今年の冬もこんな中で暮らしている家族があちこちにいるでしょう。
そしてここが重要ですが、自分が標準と考えている、つまり自分が普通である、と考えています。
ですから、他の人が「普通はこうだよ」、「世間一般の考えはこうだ」と言ったとすると、反発します。
なぜなら、自分が普通というものの世界基準ですから、自分と違うもの、自分以外の人やモノが普通とか基準になり得るはずがない、自分がそう思っていないなら、それは普通にはならない、といった考え方も見えてきます。
何様だ、自分をなんだと思っているんだ、と誰もが思います。
態度がデカい、尊大だ、となります、だから尊大型なんです。
繰り返しますが、尊大型アスペルガーは、「耐えられない」レベルと言われています。
自己愛者は避けろ、そいつから逃げろ、と言われますが、尊大型も同じです。
この点だけを見ていると自己愛性パーソナリティ障害ととてもよく似ています。
ですが、発達障害から来ているので、その態度は生まれつきのものです。
な~んだ、と思う人もいるでしょう、しかし厄介なことに、ここに後天的、生育環境で付け加えられる自己愛性パーソナリティ障害の傾向がミックスされることがあります。
そうなってくると、攻撃力、破壊力は格段に上昇します。
当然、一緒にいる人にとってのダメージは想像を超えてきます。
今回説明したような事があるなら、接し方を考えてみるべきだと思います。
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