オレは間違っていない、オマエの方が間違っている。
オレは悪くない、オマエの方が悪い、と言ってあなたや周囲の人に責任があるかのように言い張ることが多い自己愛者ですが、彼等はどうしてそこまで自信を持って他人を批判できるのか。
ここには認知の歪みの影響が出ています、そして敵意帰属バイアスと言うものも影響しています。
バイアスとは、偏る、先入観に囚われるといった意味です。
自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価する事を正常性バイアスといいます。
人は、出来事や問題が起きた時、理由や原因を探し求めます。
「それが何であるか」ということを解釈する時に、何が原因、誰が原因といった因果関係を考えて、その出来事を見ています。
このプロセスを帰属、といいます。
そしてこういった思考パターンを帰属理論といい、人はこの思考方法で生きています。
帰属というと難しく思いますが、基本的な考え方のクセとでも思ってください。
ところが、自分で考えたその帰属理論が間違っている事もよくあります。
楽天的、悲観的という思考もある種のクセだろうし、性善説性悪説もクセとして根底に持っている人もいるでしょう。
敵意帰属バイアスというのは、相手の言葉や行動を悪く捉える、自分に対しての敵意や悪意の現れと解釈する傾向、クセのある考え方捉え方をいいます。
普通に話をしているだけなのに相手から「否定された」と感じる、相手はただ質問をしただけなのに「嫌味を言われた」と感じる、といった被害妄想のような感覚のことと思ってください。
敵意帰属バイアスの原因は、認知の歪みからきているといえます。
認知とは、物事の捉え方や考え方のことで、これが歪んでいるということは「思い込みに縛られている」状態にあるということです。
歪んだ認知のせいで、実際にはない敵意を感じ取ってしまっていることです。
こういったクセのある人の特徴としては、「自己肯定感が低い」「自信がない」「経験が浅い」などがあげられます。
言い換えると自分を弱いと思っている人だからこそ、自分を守るために攻撃的になっている状態といえます。
自己愛タイプの人に多い、独善的な考え方、支配的な態度の原因もこの帰属バイアスと認知の歪みの相互作用の結果と思われます。
認知の歪みの代表的傾向である10のパターンを紹介します。
歪みはすべてクセと言ってもいいかもしれません。
1.全か無かの思考
物事に白黒つけたいというクセ
2.いきすぎた一般化
不十分な経験や根拠を一般論にしてしまうクセ
3.心のフィルター
「悪い」にフォーカス「良い」を除外するクセ
4.マイナス化思考
良いことを悪いことにすり替えるクセ
5.論理の飛躍
心の読みすぎ
・相手に確認せずネガティブ推測して先読みするクセ
・結果は悪くなるという推測をして結論づけるクセ
6. 拡大解釈 過小解釈
ネガティブを過大にポジティブを過小にするクセ
7.感情の理由付け
感情を根拠にして結論づけるクセ
8. ~すべき思考
「すべき」「せねばならない」と期待するクセ
9.レッテル貼り
自他問わずに過去の印象や言動のみで人物像を判断するクセ
10.誤った自己責任化
悪いことは全部自分のせいだと思い込むクセ
こういった考えが酷くなると、「ウツ」や「不安症」となり、精神を蝕んでいきます。
認知の歪みも考え方、物事の見方捉え方の傾向、クセを示しています。
正常性バイアスも敵意帰属バイアスも同様に、人が持つ考え方のクセです。
考え方、認知の仕方が偏っているということで、認知バイアスといいます。
認知バイアスにはいろいろあります。
1.正常性バイアス
人が予期しない事態に遭った時、「ありえない」という先入観が働く心のメカニズムのことです。
人間の「想像を超えたストレスから心身を守るための防衛作用」が関係しています。
大きな災害、火事、事故に遭遇した時に、逃げないでノンビリ見ている、といった人がいますが、これは「正常性バイアス」が働いています。自分だけは大丈夫という考えがその代表的なものです。
2.敵意帰属バイアス
これは帰属バイアスの一種で、その原因を自分への悪意、敵意として捉えるクセといえます。
知らない人がニコニコしてこちらを見た時、オレを見てバカにしている、みっともない恰好だと思って笑っていると捉えるクセ、傾向であって、被害妄想的な受け止め方が根本にあるといえるでしょう。
3.確証バイアス
他にもいろいろ情報があるのに、最初の考えに沿った情報、自分に都合の良い情報ばかりを前提にして考える傾向です。
暴力を振るわれ続けているのに「善い所もある」といって別れない人の場合は、確証バイアスが働いているケースもあります。
また血液型と性格を結び付ける事も確証バイアスです。
4.自己奉仕バイアス
成功したときは自分自身の能力によるもの、反対に失敗したときは外的要因のせいだと思い込むこと。
成功した時は自信につながるといったポジティブな面を持つ一方で、失敗した時には外部の失敗要因ばかりを集め、反省ができないまま同じような失敗を繰り返してしまう、といった思考です。
5.ダニング・クルーガー効果
能力の低い人ほど自分を過大評価してしまうという、認知バイアスの仮説です。
自分が優れているという一種の錯覚で、自分の欠点を客観的に見ることができないことで、自分を過大評価することをいいます。
自信過剰で実力が伴っていない人が、仕事や勉強、恋愛といったシーンで出てきますが、これがそうで「優越の錯覚」とも呼ばれます。
6.ツァイガルニク効果
未完了のものは完了したものより緊張感を持続しやすく、記憶に残りやすいという現象です。
たとえば「達成できた事柄に比べて達成できなかった事柄や中断している事柄のほうをよく覚えている」といったものです。
7.アンカリング
最初に提示されたものの特徴や価値、数値によって、後に提示されたものの判断が歪められる傾向のことです。
人は最初に提示された情報を強い印象として留め、この情報を前提条件としてしまう傾向にあります。
そのためあとに続く情報は、どうしても最初に得た情報に依存してしまい、あとに提示されたものの判断が歪んでしまいます。
物を買う時選ぶ時、付き合う相手を選ぶ時などによく起こります。
8.コンコルド効果
「このまま投資を進めても損失が出ると分かっている。それでもこれまで投資した分を惜しみ、つい投資を継続してしまう」心理的傾向のことです。
見切りできない人、損切りできない人のことになります。
人の認知について説明しましたが、人はすべてが認知行動に支配されています。
その認知の基準、クセ、傾向によって同じ現象を見ても感じても、受取方がそれぞれ違うわけです。
マウントを取って来る相手には嫌気が差しますが、認知の歪みから敵意帰属バイアスが働くような人も、たまったものじゃありません。
脊髄反射的に言葉を投げつけてくる、行動をするというのは認知機能や認知バイアスの問題でもあるでしょう。
ボケてきた高齢者を認知症といいますが、これは脳の病気や障害によって認知機能が低下するものです。
対して、ボケてはいないけど認知機能に問題がある、認知バイアスに問題がある人はあちこちにいるようです。
今この瞬間の、自分の思考や行動そのものを認識して、認知行動を把握すること、分かりやすく言えば、客観的に自分を見る、もうひとりの自分が自分の考え、言動、行動をチェックする能力。
自分の考え方は間違っていないか、この行動は正しいのかといったチェック機能を兼ね備えた認知行動であるメタ認知能力を養う必要があります。
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